和食に付きもののおさしみ(刺身)。真っ白なダイコンの千切り、緑のシソ葉、ピンクのシソ花、黄色の菊の花、それにワサビを配した器は美しく膳の花と云えます。
又、冷奴はかつを節や葱、ミョウガ、おろし生姜などをのせて食べるのも素朴な日本の味です。
主役は刺身では魚介、冷奴では豆腐に違いありませんが、脇役であるツマが今日は主役です。
ツマは単なる飾りではなく、薬味(やくみ)とも云われ、主役には無くてはならない存在です。
この大切なツマ(薬味)にも漢方の知恵が生かされていて、ワサビ、葱、ミョウガ、ショウガなどのピリ辛は冷やす性質のある魚介や豆腐に対して胃腸を暖め消化力を増し、蛋白質の腐敗を防ぎ、又、ダイコンのピリ辛は主役の蛋白質の消化を助け(ジアスターゼ)、カロリーの熱を抑えます。
シソの葉や花は魚介類の毒消しに働き、防腐殺菌の作用があり、菊の花も又、その苦味で厚味の食べ物の熱をさまし解毒する働きがあります。
こんなことも漢方を学んで初めて気付き理解できました。
料理の世界も奥が深く先人の知恵に感心感謝し、日本の食文化を大切にしたいとつくづく思います。
しかし、こんなに素晴らしい仕掛や工夫のある料理ですが宴会などで刺身皿を見ると多くの方がツマ(薬味)を残しているのを目にします。
漢方の知恵を学んだものにとっては残念なことです。
薬味を一緒に食べない人は、せっかくの料理もからだに有効な形で消化されず、ヘドロ化することでしょう。
その結果の転失気の香りは最悪となるのは必定です。
西洋栄養学では栄養素を脂肪、蛋白質、糖質、ビタミン、食物繊維などに分類し、バランスよく摂るようにすすめていますが、西洋栄養学だけでは説明がつかないパワーが食物には秘められています。
漢方栄養学(薬膳)では全ての食べ物には味(酸・苦・甘・辛・鹹)があり、それぞれの味に特有の効能があると考えています(後日詳記)。
五つの味は内臓に様々な働きかけをします。更に体を温めたり(例、トウガラシ)、冷やしたり(例、ハッカ)する作用もあり、冷やす性質のものを食べるときは、温める物(薬味)も食べるようにしてバランスを取ります。
刺身には辛味と香気を利用したワサビ、シソの葉などはその典型で素晴らしい組み合わせといえます。
食養生は西洋栄養学に漢方の知恵の栄養学を取り入れることで最高の養生法となることは確実です。
*次回以降の予告:体質に合った食べ物、食べ方