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治験報告 坐骨神経痛(下肢の激痛)に漢方理論の勝利
 二十四節気の”白露”がすぎ野草に露が宿り始めると暦では表現していますが、まだまだ暑熱は収まりそうにありません。この暑さにやられて今夏は熱中症や脳梗塞が多かったように思います。今回報告の下肢痛(坐骨神経痛)も暑熱の影響で発症したと思われます。

 患者は78歳の男性 左下肢の激痛、整形外科で不治

24年07月21日 立ち仕事中左足全体が妙に軽くなりしびれた感じで動いたらよろけた。長く座って立ったときのよう。脳血管の異常かと思い内科を受診したが異常なし。

 その日の夜中から腰臀部、脛骨の外側に今まで経験したこともない激痛に襲われた。痛みで左下肢の置き場がない。痛くて寝ていられない。翌日、整形外科を受診。坐骨神経痛の診断で鎮痛剤の注射、内服薬、牽引、電気治療などを受けた。3日目頃から痛みは益々強くなり、足を引きずりながら仕事をこなした。昼間は無理しながらも仕事をすることで痛みは紛れたが夜中の激痛には耐えられず不眠も続く。不安で気が狂いそう。夜明けが待ち遠しい。

 X線、MRIの検査で腰椎の神経が少々圧迫されているとの診断。益々強い痛み止め、そしてボルタレン座薬も全く効果がなかった。毎日通院するようにとのことで20日間治療を受けた。治験報告 坐骨神経痛(下肢の激痛)に漢方理論の勝利_e0024094_1534370.jpg

8月10日当薬局に来店。漢方薬処方上必要な問診に協力いただいた。

左下肢痛は臀部外側は重苦しくしびれるように痛み、頚骨(すね)外側膝下~くるぶし辺りまで(胃経)激痛。痛み方を問うに、「刺しこむように」「張ったように」「夜間に痛みが増す」「患部の皮膚色が青黒い」などの訴えを聞き出す。これらの症状は中国医学では皆 ”おけつ(瘀血)”の症状に分類されます。漢方では激しい痛みは瘀血か冷えの場合が多く見られます。

 この方の基本体質は痰湿タイプ(水はけが悪い体質)ですが、夏の暑熱で痰湿が熱を帯び、蒸れた状態になっています。中国医学では”湿熱”という病邪に変化しています。舌診:形は大きく厚く赤みが強い、舌の中央に厚く黄白色の苔があり(湿熱の代表的症状)舌裏静脈は太い(おけつ瘀血の症状)。小便色濃く、大便硬いは(湿と熱のバランスが熱症状が勝っているので濃縮率が高い状態)。

以上の症状から、この激痛は湿熱瘀血(しつねつおけつ)の病理的産物の実邪に原因があると思われます。湿熱は身体の水分(津液など)が濃くなった状態であり、おけつ(瘀血)は血の流れが滞ったり汚れたりした状態であり、いずれも身体の水液が暑熱により煮詰まり正常なものではなくなっているので流れが悪くなります。この滞りこそ痛みの原因と中国医学では診ています(不通則痛)。

 治療:湿熱にたいしては清熱利湿薬を、瘀血(おけつ)にたいしては活血化瘀(かっけつかお)薬を組み合わせてみた。

 経過:3日目の朝に来店4回目服用の昨夜は痛みが柔らいたのか2~3時間眠れた。久しぶりで気分が良い。マダラ模様だけど痛みが軽くなるときがある。
    7日目足裏の痺れの訴えあり。激痛を忘れる時間が長くなり夜は眠れるようになつた。顔をしかめることもなく笑みが出てきた。
    10日目痛みしびれは遠のいてきた。
    14日目軽い痛みがたまにあるが激痛時から見たら語るに及ばない。足がだるい、つい座りたくなるなどの訴えあり。気や血の不足を補い筋骨を強化する処方に一部変更。
    21日目以前からあった右足ひざ裏の痛みに気付く。

 現在、舌の状態がかなり改善されたので湿熱の漢方薬を軽くし,瘀血と気血を補い筋骨を強化する漢方薬・年齢を考慮して補腎薬を併用して治療を継続中。顔の表情が明るくなり苦情も殆どなくなった。

 考察:湿熱と瘀血という病邪を治療する方法は漢方にしかない理論です。その治療法も確立されていて、基本どうりに応用して短期間に患者の苦痛を取り除くことができ、漢方理論の確かさを実感することができました。中国医学に感謝です。








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by home-k | 2012-09-08 18:35 | 痛みと漢方