冷え(陽虚)が原因と思われる様々な症状や疾患を漢方の立場から解説してみたいと思います。
冷え症とは四季を通じて冷えを感じたり、健康な人では寒いとは感じない気候や環境で冷えを感じたり、寒がりでクーラーを嫌い・いち早く暖房器具にかじりついていたり、冷えることに不快感や苦痛を感じることを言います。
原因は飲食の不摂生や生まれつき虚弱な体質、慢性病や老化ににより身体に温める力が衰えたことによります。その他ストレスや瘀血(おけつ)によるものもありますので次回に報告いたします。
こんな症状をともなうのも 冷え症(陽気の不足=陽虚) です。
1.冷たい飲食物をとると急に腹痛、下痢になる
2.慢性的に泥状便(溏便)や水様便が多い
3.よだれが多く時々顎までぬれて皮膚がびらんする
4.口中に飲み込めないような薄い唾液が湧き出るように溜まる
(或いは唾液腺が低下したはずの老人がよく口をぬぐう)
5.冷えて尿量が多く色が薄く特に夜間に回数が多い
6.腰から下肢が冷える、力が入らない
7.手足が強く冷え、下肢内側、陰部、下腹部外側(左右)が冷える
8.元気がなく疲れやすくウトウトしやすく直ぐ横になりたがる
9.顔色に艶が無く皮膚のきめが粗い
10.さむけとのどの痛みが続く
11.女性では基礎体温が低く月経周期が遅れて妊娠しにくい
12.月経痛に毎月悩まされる
13.薄いおりもの(帯下)が多い ・・・・・など
このように冷えが原因と思われる症状や疾患が多くありながら西洋医学では冷えに対する認識や温める療法という考え方が乏しいので多くの方々が適切な治療を受けられないまま放置されているのが現状です。
一方、漢方医学(中医学)では2200年も前に中国で編纂された
「傷寒論(しょうかんろん)」という中医学の聖典にも記されているように寒(かん=冷え)に傷(きづ)ついたときの治療法がしっかり指示されているのを見るとき、先人の偉業に大変驚かされるとともにBC.の時代でも冷えの病との戦いであったことがしのばれます。
治療法は、前回、「しょうが健康法」でも記しましたように、冷え性の改善には生姜を乾燥させた乾姜、附子・桂皮・呉茱ゆなどが中心の生薬で温中散寒法、回陽救逆法、温陽利水法、温経散寒法などの治療法があり、陽気を補うことを中心に多くの処方が病状に応じて用意されています。至れり尽くせりの治療法(扶陽学説)を今に用い快適な人生を送りましょう。
トリカブトの花 (秋の金時山にて)トリカブトの名は雅楽で使う兜の鳥兜に似ていることから名づけられたということです。 子根を「附子(ぶし)」といいます。

乾姜と附子はよくコンビで使われ薬効をお互い引き立たせるので「乾姜は附子なくして熱せず」と古人はいい伝えています。 附子は有毒で薬用に加工されたものでないと危険ですので、専門家以外使用禁止です。
扶陽学説;様々な原因で冷えて陽気が減少し内蔵機能が低下した状態に、温める働きのある乾姜や附子などの温熱薬を用いて身体の機能を引き上げる療法です。
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